東京高等裁判所 昭和51年(行ケ)64号 判決 1976年10月12日
原告
テキサコ・デイベロツプメント・コーポレーシヨン
右代表者
フランク・ハサウエイ・タウズリイ・ジュニア
右訴訟代理人弁理士
佐藤正年
同
木村三朗
被告
特許庁長官
片山石郎
右指定代理人
桜井周矩
外一名
主文
特許庁が昭和五一年二月二五日同庁昭和四八年審判第三四六五号事件についてした決定を取消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実および理由
原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、その請求原因として、つぎのとおり述べた。
一特許庁における手続の経緯
原告は昭和四四年一二月二七日特許庁に対し、一九六八年一二月三〇日アメリカ合衆国にした特許出願に基づく優先権を主張して、名称を「鉛を添加した内燃機関燃料からの排ガスの処理法」とする発明につき特許出願をしたが、昭和四八年一月三〇日拒絶査定を受けた。そこで原告は同年五月二一日審判の請求をし、同年審判第三四六五号事件として審理されたが、同五一年二月二五日「本件審判の請求書を却下する。」旨の決定があり、その謄本は出訴期間として三か月を附加する旨の決定とともに、同年四月二一日原告に送達された。
二本件決定理由の要点
審判請求人(原告)は本件審判請求にあたり、審判請求書の欄に代表者を記載していないので、審判長は期間を指定して補正を命じたが、指定期間内に補正しなかつた。
したがつて本件審判請求は、特許法第一三一条第一項第一号の規定に違反するので、同法第一三三条第二項により本件審判請求書を却下しなければならない。
三本件決定を取消すべき事由
本件決定は次の点において違法であり、取消されねばならない。
本件審判請求書についての補正指令は、昭和四九年九月三日なされ、その補正指令書は同年九月二四日発送され、発送の日から四〇日以内に請求人代表者を記載した審判請求書一通を補正するよう指令されていた。ところで、原告は同年九月二六日請求人代表者を記載した審判請求書一通を、手続補正書に添付して提出し、補正を完了している。しかるに本件決定は右事実をみすごし、指定期間内に補正がないものと誤つてなされたものである。
被告指定代理人は「原告の請求を棄却する。」との判決を求め、原告主張の請求原因事実はすべて認める、と述べた。
右争いない事実によれば、本件決定は違法であつて取消されねばならない。
よつて、原告の請求は正当であるから認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(杉本良吉 舟本信光 小酒禮)